「オルソケラトロジー」という言葉を、最近テレビや雑誌で目にした方も多いのではないでしょうか。夜、眠っている間に特別なコンタクトレンズをつけておき、朝外すと日中は裸眼で見えるようになる——そんな近視の治療法です。手術をせずに視力の改善を目指せることから、お子さまの近視対策としても、大人の方のメガネ・コンタクト離れの選択肢としても関心が高まっています。
このページでは、オルソケラトロジーがなぜ効くのか、どんな方に向いているのか、処方までの流れと費用について順番にご説明します。
中野島・登戸ルミタス眼科 白内障と近視のクリニックの執刀医。
東京大学医学部附属病院や虎の門病院等の基幹病院にて、高度な眼科手術の研鑽を積んだスペシャリスト。ICL認定医として近視矯正から多焦点レンズを用いた白内障手術まで、精密な手技を要する眼内レンズ治療を専門としています。
科学的根拠に基づく、正しい医療情報を発信しています。
オルソケラトロジーとは

オルソケラトロジーは、酸素透過性の高い特別なハードコンタクトレンズを使って近視を矯正する方法です。ポイントは「昼ではなく夜につける」こと。就寝前にレンズを入れて眠ると、寝ている間にレンズが角膜(黒目の表面にある透明な膜)に軽い圧をかけ、そのカーブをゆるやかに変えていきます。角膜のカーブが変わると、目に入る光の曲がり方も変わり、ピントが網膜の上で合うようになります。
朝レンズを外したあとも、整えられた角膜の形はしばらくそのまま保たれます。そのため、日中はレンズもメガネもなしで過ごすことができるのです。
近視が改善する仕組み
装用前(近視の状態)
私たちの目は、外から入った光を角膜と水晶体で屈折させ、奥にある網膜でピントを結ぶことで物をはっきりと見ています。近視の目では、この屈折が強すぎたり眼球が長すぎたりして、ピントが網膜より手前で合ってしまいます。その結果、遠くの物がぼやけて見えます。
装用中
就寝前にオルソケラトロジー用のレンズを装用します。眠っている間にレンズが角膜の中央部をなだらかに平らにし、強すぎた屈折を弱めていきます。しっかりと効果を出すには、6時間以上つけたまま眠ることが目安です。装用時間が6時間に満たない日が続くと角膜の形が十分に変わらず、日によって見え方が変わる原因になります。
装用後(裸眼時)
起床後にレンズを外します。平らに整った角膜はすぐには元に戻らないため、その日の日中は裸眼のままはっきりと見えます。どのくらいの時間効果が続くかには個人差があり、特に始めたばかりの頃は夕方に見えにくくなることもあります。毎晩続けて装用するうちに安定してくるため、根気よく続けることが大切です。
オルソケラトロジーが向いている方

以下のような方には、オルソケラトロジーが向いているとされています。
- 近視の程度が軽度から中等度までの方
- メガネやコンタクトレンズの着け外し・お手入れを負担に感じている方
- サッカーや水泳など、スポーツを裸眼で思い切り楽しみたい方
- 接客や調理など、汗やマスクでメガネが曇りやすいお仕事の方
- お子さまの近視がこれ以上進まないようにしたいとお考えの保護者の方
- レーシックやICLといった手術には踏み切れないものの、視力を何とかしたい方
オルソケラトロジーのメリット・デメリット

Merit
メリット
- 起きている時間はレンズもメガネもいらない
- レンズをつけたままでも物が見えるため、夜中に目が覚めても困らない
- 対象年齢が6歳頃から65歳頃までと広く、お子さまから大人まで対応できる
- お子さまの場合、近視の進行をゆるやかにする効果が期待されている
- 手術をしないため、目にメスを入れる必要がない
- やめれば角膜は元の形に戻るため、合わなければ中止できる
Demerit
デメリット
- レンズの洗浄・消毒を毎日欠かさず行う必要がある
- 目の状態を確認するため、定期的に通院しなければならない
- 強い近視や乱視、遠視には対応できない
- 効果が安定するまでに数日から数週間かかる
- 毎晩の装用が前提で、6時間以上の睡眠時間を確保する必要がある
オルソケラトロジー処方の流れ
適応検査
はじめに、オルソケラトロジーがその方の目に合うかどうかを調べます。屈折検査で近視の度合いを測り、角膜形状解析で角膜のカーブを詳しく確認するほか、眼圧測定・視力検査・角膜内皮検査などを行い、治療に問題がないかを総合的に判断します。
装着テスト(トライアルレンズの試着)
適応検査で問題がなければ、院内でテスト用のレンズを実際に装用していただき、つけ心地や見え方の変化を確かめます。
トライアル期間
レンズをお貸し出しし、ご自宅で実際に使っていただく期間です。この間は原則として1週間後・2週間後・3週間後の3回ご来院いただき、角膜の状態と視力の変化を検査・診察で確認します。
レンズの処方・購入
トライアル期間の経過を踏まえて、目の状態に問題がなく効果も得られていれば、正式にレンズを処方し、ご購入いただきます。
定期検診
購入後も、安全に使い続けるために定期的な受診が必要です。目安として購入1か月後と2か月後に受診いただき、その後は3か月ごとの通院となります。
オルソケラトロジーの費用
オルソケラトロジーの費用は以下のとおりです(すべて税込)。
| 内容 | 料金 |
|---|---|
| 適応検査 | 3,000円(税込) |
| 装着テスト(トライアルレンズ試着) | 5,000円(税込) |
| トライアル期間 | 3,000円(税込) |
| レンズの処方・購入 | 通常料金:片眼90,000円 両眼180,000円(税込) 学割(18歳以下):片眼80,000円 両眼140,000円(税込) |
| 定期検診 | 3,000円(税込)/受診1回ごと |
治療にあたっての注意点
オルソケラトロジーは健康保険の対象外となる自由診療です。検査・レンズ・定期検診のいずれも全額自己負担となりますので、あらかじめご了承ください。
レンズには寿命があります。使い方やお手入れの状況によって差はありますが、おおむね2年前後で交換の時期を迎えます。
また、レンズの洗浄・消毒が行き届いていないと、角膜炎や結膜炎、細菌などによる感染症といったトラブルを招くことがあります。正しい方法で装用・お手入れを行い、定期検診を欠かさず受けていただければ、こうした合併症は防ぐことができます。
まとめ
オルソケラトロジーは、夜の装用だけで日中を裸眼で過ごせる、手術不要の近視治療です。視力の改善に加えて、お子さまの近視進行を抑える効果も期待されています。
メガネやコンタクトの毎日の手間を減らしたい方、お子さまの近視の進み方が気になる方は、当院までお気軽にご相談ください。
よくあるご質問
何歳から始められますか?大人でも受けられますか?
オルソケラトロジーの適応年齢は6歳~65歳頃までと幅広く、お子さまから大人の方まで対象となります。ただし、軽度~中等度の近視が対象で、強度近視・乱視・遠視は矯正できません。治療が可能かどうかは、適応検査で角膜の形状や目の状態を確認したうえで判断します。
睡眠時間が短い日があっても大丈夫ですか?
正しい効果を得るには、毎晩6時間以上の装着が必要です。睡眠時間が6時間以下になると角膜の形が十分に整わず、矯正の効果が不十分になって視力が安定しない要因となります。また効果には個人差があり、使い始めは持続時間が短い傾向があるため、継続して装着することが大切です。
健康保険は使えますか?レンズはどのくらい使えますか?
オルソケラトロジーは自由診療のため、健康保険は適用されず全額自己負担となります。レンズの寿命は個人差や使用状況にもよりますが、おおよそ2年程度が目安です。レンズのケアが不十分だと角膜炎・結膜炎・感染症などの合併症が起こることがあるため、毎日の適切なお手入れと定期検診を続けていただくことが大切です。
記事の執筆・監修者プロフィール
理事長 小林 一博
- 日本眼科学会認定専門医
- 難病指定医
- 視覚障害者用補装具適合判定医師
- ボトックス認定医
- ICL(眼内コンタクトレンズ)認定医
中野島・登戸ルミタス眼科 白内障と近視のクリニックの執刀医。
東京大学医学部附属病院や虎の門病院等の基幹病院にて、高度な眼科手術の研鑽を積んだスペシャリスト。ICL認定医として近視矯正から多焦点レンズを用いた白内障手術まで、精密な手技を要する眼内レンズ治療を専門としています。
科学的根拠に基づく、正しい医療情報を発信しています。